インタビュー: “The Year Without Pants” 著者スコット・バークン

人気作家スコット・バークンがチームリードとして WordPress.com を運営する Automattic で働いた経験を書籍にした「The Year Without Pants」の公開に合わせて、インタビューを行いました。

訳注: 日本語訳版は「マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた」として発売されています。洋書版も Amazon Japan にてハードカバーKindle の取り扱いがあります。

スコット・バークンはこれまでに複数の書籍を出版しており、人気の講演者でもあります。彼の作品はニューヨークタイムスワシントンポストフォーブスウォールストリートジャーナルエコノミストガーディアンWIRED マガジン、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)ハフィントン・ポストなどにも取り上げられています。

2010年から2012年にかけて、スコットは Automattic でソーシャル機能開発チームのリーダーを務めました。彼は最近、Automattic での分散型チームを率いた経験について詳しく書いた、The Year Without Pants: WordPress.com and the future of work(パンツをはかない一年: WordPress.com と働き方の未来)という新しい書籍を出版しています。スコットに、この本と Automattic での日々について質問をする機会がありましたのでその回答をご紹介します。

Scott Berkun

スコット・バークン(Scott Berkun)

Q: 本のタイトル「The Year Without Pants: WordPress.com and the future of work」について聞かせてもらえますか?パンツと働き方の未来にどんな関係があるんでしょう?
 
A(スコット): ギャラップが最近実施した世論調査によると、労働者の71パーセントが仕事に没頭していないそうです。ひどい数字ですよね。この本はビジネス界への警鐘であり、タイトルはそれを反映したものです。服装の規程や9時から5時という時間割によってみんながよりスマートに、生産的になるという証明はどこにもないのに、ほとんどの職場ではこういったルールが要求されています。なぜでしょう?この本では私が WordPress.com で実際に体験したことをもとに、仕事の場で何が足りないのか、そしてそれを変えるにはどうすればよいのかについて語っています。

Q: 4章で「文化研究の失敗から生まれる大きな間違いとは、ある文化での習慣を他の環境に単純に押し込んだとしても似たような結果が得られるはずと思い込むこと」と述べています。分散型労働における、企業を繁栄させるような文化の特徴とは何でしょう?

A: 信頼、ですね。シンプルですが、ほとんどの職場では存在しないものです。だから、先ほど挙げた71パーセントという数字のようなことになっているのでしょう。自分の仕事に熱中している残りの29パーセントの人たちは、きっと上司が彼らを大人として十分信頼していて、最も生産的に働くにはどうすればいいのかそれぞれが決められると信じてくれているんだと思います。

YWP-COVER-FINAL-200x300Q: 同じく4章で、オープンソースプロジェクトとしての WordPress 開発における3つの原則を「透明性・実力主義・存続性」であるとしています。これらの原則は現在の Automattic にどのように当てはまりますか?

A: Automattic ではほとんどメールを使わないため、ほぼすべてのコミュニケーションを誰でも見ることができ、やりとりがメールの受信箱に閉じ込められません。多くの社員がいつでも好きなときに WordPress.com 上で新機能や更新を公開できるため、とても頻繁に機能ローンチが発生し、生産的に仕事をしているのは誰なのかがすぐに分かります。また、創始者のマット・マレンウェッグと CEO のトニー・シュナイダーの二人は常に長期的に考えた決断をしがちなため、士気をくじくようなバカバカしく短絡な騒ぎはほとんど存在しません。

Q: Automattic で学んだことのうち、企業がより良く仕事をするためのレッスンを3つ選ぶとすれば?

A: しっかり掘り下げて理解することが必要、というのが一番大事なレッスンです。これを読んでいる皆さんも仕事に満足していない71パーセントのうちのひとりかもしれません。でも多くの管理職がよくやるようにヒントやコツだけをつまみ食いしても、それを支える文化が育っていなければきっと失敗してしまうでしょう。Automattic の成功を再現するには、雇用の手法、価値観が決断に与える影響、どうしてあるツールを使うのか、もしくは使わないのか、といったストーリーを深く読み込んでその文化をしっかり理解する必要があります。そうすることによってだけ、自分自身の仕事のやり方を改善する次のステップを知ることができるでしょう。

Q: あなたは管理職として一般的なオンサイトのソフトウェア開発チームにも関わったことがあります。Automattic の分散型労働を経験して学んだ重要なことはなんでしょう?驚いた点はどこですか?

A: 一番驚いたのは、基本的なことが重要だと再発見したことですね。信頼を築き、透明性を確立し、採用をうまくやれば、どんな問題が起こっても打破できます。The Year Without Pants では、10歳近く年下のチームメイトと一緒だったり、完全なリモートワーク環境だったり、お互いが非常に異なる文化を持っていたりという(自分も含めた)管理職には恐ろしいシチュエーションだったにも関わらず、この基本的なルールに従おうとした私のストーリーを語っています。

Q: もし Automattic の運営を任されたとしたら、どういった点を変えますか?

A: WordPress ブログにトラフィックがもっと増えるようにしたいですね。特に自分のサイトに…というのは、冗談です(笑)。他の人たちに、もっと大きな賭けや実験をやってみるよう勇気づけてあげたいなと思います。書籍では、Automattic で働いていた間に私自身が経験した失敗と成功を通して、このことについて詳しく説明しています。

Q: この先の計画は?
 
A: 3年かけて書き上げた本が出版された今、プロモーションで数ヶ月忙しくなる予定です。本を書くのも大変ですが、広く宣伝するのはもっと大変です。でも、働いているすべての人たちがよりよく仕事をできるよう変わっていくために、この本と Automattic のストーリーは興味深く、役に立つものだと信じています。シアトル、ニューヨーク、ボストンなどに書籍のプロモーションツアーで訪れる予定です。

The Year Without Pants の書籍宣伝ムービーもどうぞ。

未来的な働き方に興味が湧いた方は、Automattic で働いてみませんか。一生懸命働いたり、アイディアを共有したり、同僚から学んだり、周りに言われる前にイニシアチブをとって仕事を終わらせたり、恐れず質問をしたりするような人を探しています。気が合いそうだなと思ったら、現在募集中のポジションをご覧ください(訳注: 英語での応募が必要になります)。

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この記事は Krista が WordPress.com 英語版ブログに投稿した「The Year Without Pants: An interview with author Scott Berkun」の訳です。

翻訳: 高野直子


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